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Vol.3 |
病気を介して人間として深化・成長すること |
クリニックに来院する患者さんの殆どは、その症状が消えて以前の自分に還れること信じている。でも最近思うことは、人間が完全に健康であるとか完全に狂っているなどということは本来あり得ないということである。
健康に向かう、或いは病気に向かうことはあっても、完全に病気が回復するということはありえない。その病気を通してその人が一人の人間としてどれだけ成長していけるか・・・。つまり病気は常にその人の傍らに存在しているのであり、病気が消えて元の自分に戻ることはない。むしろ病気を通して新しい自己へと成長・変革していくことこそ病気の意味であるとさえ思う。
病気も苦しみも全ては新世界を見る目を新たに生み出す為の介在であるに過ぎない。病気が生み出す耐えがたいほどの苦しみや悲しみを想う時、今云ったようなことを簡単に言えないことはよく分かっている。
それでも敢えて言う。
「病は呼びかけである」
新しい自分を生み出す為に必要な呼びかけである。人は人生を生きる中で常に苦しみと共にある。でももしこの世界に苦しみが存在しないとしたら人間の人生は平凡なものになってしまう。何の成長も発見もないつまらないものになってしまう。病を通して苦しみ、病を通してどこまで真実の世界に気がついてゆけるのか。
病は確かに苦しみだし関わる多くの人を悲しみの中に叩きこむ。それでも病を通して人間は様々なものに気がついてゆく。限られた時間の中でやっと人生の掛け替えのなさに気がつくのかも知れない。肉体は幾ら長く永らえるといってもせいぜい100年余りでしかない。この有限な肉体に起こる事象を通して人間は自らの魂を深化成長させてゆく。病は或る意味でこの人生を深化・成長させていくための同伴者である 。
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